提一燈。行暗夜。勿憂暗夜。只頼一燈。
“一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂えることなかれ。只一燈を頼むのみ。” 佐藤一斎「言志晩録」十三条

2011年8月13日土曜日

わたしの(好きな)言志四録 その74



110813

言志録 第74条




治安日に久しければ、楽時漸く多きは、勢(いきおい)然るなり。
勢の趨(おもむ)く所は即ち天なり。
士女聚(あつま)り懽(よろこ)びて、飲讌歌舞(いんえんかぶ)するが如き、在在に之れ有り。
固より得て禁止す可からず。
而るを乃ち強いて之を禁じなば、則ち人氣抑鬱して発洩する所無く、
必ず伏して邪慝と為り其の害殊に甚しからん。
政(まつりごと)を為す者但だ当に人情を斟酌して、之が操縦を為し、
之を禁不禁の間に置き、其れをして過甚に至たらざらしむべし。
是れも亦時に赴くの政然りと為す。


天下泰平、安逸をむさぼる世の中で、
楽しみに耽ることは、人のもつ氣の勢いからも
天意にかなうものであるという。
ただし、まつりごとを為す者が心得なければならないことは、
人情が、行き過ぎないようにすること。

折しも、文化文政の爛熟期の只中での言で、
世の中が勢いづいている時であったと思う、その時、
世情の勢いの上下を、どうコントロールするかが、
政治の時勢への対処の勘どころであるという。
同様に、第84条では、下情に通ぜざるべからずと。

自らの事を省みても、人情の勢いにまかせてやることの
後悔の多いこと身に覚えあり、
氣の勢いの上下に乗じて、
人情の振幅にどう対処するかが、修身のキモかもしれない。

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