提一燈。行暗夜。勿憂暗夜。只頼一燈。
“一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂えることなかれ。只一燈を頼むのみ。” 佐藤一斎「言志晩録」十三条

2011年7月11日月曜日

わたしの(好きな)言志四録 その41

110711

言志録 第41条




富貴は譬えば則ち春夏なり。人の心をして蕩せしむ。
貧賤は譬えば則ち秋冬なり。人の心をして粛ならしむ。
故に人、富貴に於ては則ち其の志を溺らし、
貧賤に於ては則ち其の志を堅うす。


富貴といい貧賤といい、これは
個人の境遇であるばかりか、
その時々の社会情勢をもいうのだろう。
江戸時代の文化文政の爛熟期に、
人の心の退廃を看破し、
国家としても、武士としても、その使命を見失った状況が
また、一斎先生をして、
本書を書かせることにもなったのかもしれない。

また人生で云えば、春夏を過ぎ、
これから秋冬を迎える厄年を過ぎての心境には、
共感を覚える。

夏と冬の対比に、
はるか四半世紀前の耳に残る
母校新潟県立三条高校校歌を思い出す。

その5番には、

世は柔弱の風ぬるく/咲くや浮薄の花あれど
我は花なき松杉の/冬凛々の気を凌ぎ
夏炎々の日に枯れず/国の柱とそびえばや

と。

バブル絶頂の頃 青年期を過ごすことのできた我々は、
人生の後半生を、
まさに国の貧賤期と同期して過ごすことになるのだ。
覚悟せよ。

今は元治元年(1864年)からはじまる180年の最後60年の下元の時代を、
まさに一回り前の一斎先生言志四録執筆時期を生きていることになる。
ここを越えると、43年後の2044年には、再び上元へと繰り返すことになる。

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